蚊(か)、ハチ、ブユ(地域によってはブヨ、ブト)、ガ、ノミ、ダニ、ケムシなどの昆虫に皮膚を刺され、毒性のある物質が体の中に入ることで、痛み、かゆみ、腫れなどの症状が起こります。これらの毒性物質によるアレルギー反応により、アナフィラキシーショックという全身のショック症状を引き起こすこともあります。
蚊に刺されると、赤い腫れや小さなしこり、激しいかゆみがあらわれます。その他、かゆみを引き起こす虫には、ノミ、ダニ、ブユなどがいます。
ハチやムカデ、クモに刺されると、腫れや鋭い痛みが起こります。また、一度これらの虫に刺されると、アレルギーを引き起こす抗体が体内に作られ、次に刺されるとアナフィラキシーショックと呼ばれる全身のじんましんや発熱、呼吸困難、血圧低下などのショック症状を引き起こす可能性があります。これらの重篤な症状はアレルギーによって起こるもので虫の大小とは無関係です。
ケムシは背中の毒針で刺します。一度に数か所を刺す上、針が服を通り抜けて露出していない部分も刺されることがあります。ケムシの中でもツバキやサザンカなどにつくチャドクガのケムシによる被害が一番多いといわれています。小さな赤い発疹ができて、ピリピリとした痛みが生じた後、強いかゆみが出ます。これらの症状にもアレルギー反応が関係しています。
南京虫に刺されると、アレルギー反応も加わり、激しいかゆみが生じ、刺された痕は1~2週間以上残ります。布団やベッドに潜み、そこで被害を受けることが多くあります。また壁や畳、コンセントの隙間などに隠れていることもあります。
屋外で蚊やブユに刺されないためには、できるだけ肌を露出しないことが大切です。また、携帯用蚊取り線香や虫除けスプレーを使うことで、虫さされをある程度防ぐことができます。
スズメバチは黒いものに寄ってくる習性があります。黒い服は避けて、黒色以外の帽子をかぶりましょう。ハチを刺激する香水やキラキラ光るものはつけないこと、ハチの巣に近づかないことが大切です。追い払おうとすると、自分たちが襲われたと判断して攻撃してきます。ハチが去るのを静かに待ちましょう。
かゆみを引き起こす虫に刺されたときは、すぐに市販のかゆみ止めを塗りましょう。かゆみがひどいときは、冷やすと楽になります。かゆいからといって、患部をかいてしまうと細菌に感染することもありますので、気をつけましょう。
すぐに患部を流水でよく洗いましょう。ハチの針が皮膚に残っている場合は、先の細いピンセットや毛抜きで取り除き、患部を冷やしながら病院に行きましょう。呼吸困難、めまい、意識障害等のアナフィラキシーショックと思われる症状があらわれた場合は、すぐに救急車を呼んでください。
ケムシの毛が残っていたら粘着テープなどで取り除き、患部を強くこすらずに、石鹸で何度も洗い流します。市販のかゆみ止めをつけ、腫れや痛みがある場合は病院で診察を受けましょう。ムカデに刺されたときも、すぐに傷口を水で洗いましょう。
強いかゆみが続くときや発熱、倦怠感をともなう場合は、病院で診察を受けましょう。
火や熱湯、高温のものに触れたりして皮膚が損傷することがやけどで、熱傷ともいいます。やけどの重症度は、触れたものの温度と接触している時間で大きく異なります。やけどを軽症化するには、すぐに流水で冷却することが何よりも効果的です。
やけどの原因で最も多いのは、火や熱湯などの熱を帯びたものとの接触です。45℃以上では1時間、70℃の場合では1秒間触れるだけで皮膚の損傷が始まります。とくに子どもがいる家庭では、アイロンを扱うときや調理中のキッチンに子どもが近付かないように細心の注意を払いましょう。
ホットカーペット、湯たんぽ、使い捨てカイロなど、熱湯などと比べ低温のものでも長時間皮膚が触れていると、触れている部分に熱がこもってやけどします。これを低温やけどといいます。この低温やけどは湯たんぽによるものが多いのですが、最近ではノートパソコンの放熱によって手のひらなどをやけどするケースも報告されています。軽症のようでも、皮膚の深い部分までやけどが達していることがある上に、低温やけどは冷やしても効果がありませんので、早めに専門医を受診しましょう。
塩酸などの強い酸性、苛性ソーダなどの強いアルカリ性の化学物質に触れることでやけどと同じように皮膚が損傷します。これが化学熱傷です。家庭でも良く使う排水パイプ用洗剤、消臭剤、殺菌剤、漂白剤、トイレ用洗剤など、意外に身近なものが原因になりますので、注意が必要です。化学物質によってやけどをした場合は、通常のやけどよりも長時間(30分以上)流水で洗浄することが大切です。
表皮のみ損傷しているもので、皮膚は赤くなりヒリヒリとした痛みをともないます。即座に流水で冷却すると、あとを残さず3~5日で治ります。強い日焼けも軽度のやけどにあたります。
表皮の下の真皮も損傷を受けた状態です。赤み、腫れ以外に水ぶくれがあらわれ、激しい痛みをともないます。しかし、真皮の深くまでやけどを負った場合は感覚が麻痺し、痛みを感じなくなります。
表皮、真皮、さらに皮下組織にまで及ぶやけどです。皮膚は白色や黄褐色、黒褐色になり、痛みはなく、しびれたような感覚になります。火災や熱した油などによって起こることが多いです。自然治癒は困難で植皮が必要になる場合がありますので、すぐに医療機関を受診してください。
やけどをしたときは、ただちに流水や氷、氷水で濡らしたタオルなどで20~30分を目安に冷やしましょう。温度は10~15℃程度が最適で、あまり冷たすぎると痛みが増すおそれがあります。やけどをしたときにすぐに衣服を無理に脱がそうとすると、皮膚が衣服にくっついて剥がれてしまうことがありますので、まずは着衣の上から冷却しましょう。
症状が皮膚の赤みだけで水ぶくれなどがない場合は、十分な冷却とやけどに効果のある外用剤を患部に塗ることで治療することができます。
やけどによって赤く腫れたり水ぶくれができたり、激しい痛みをともなうようなときは、病院で診察を受ける必要があります。患部を十分に冷却した後、病院を受診しましょう。その他、赤ちゃんや子ども、糖尿病の疾患のある人、やけどの範囲が手のひらよりも大きなときや痛みがなく、皮膚が白っぽく見えたり黒く焦げているような場合、傷口が清潔でないときなどは必ず医師の診断が必要です。
皮膚に赤色からピンク色の表面が平らな盛り上がり(膨疹)ができ、激しいかゆみをともなうのがじんましんです。膨疹の大きさや形はさまざまで、数時間で綺麗に消えてかゆみもなくなりますが、しばらく時間をおいてからまたあらわれるのが特徴です。また、かけばかくほど症状は悪化し、膨疹は広がります。
魚介類ではサバやサンマなどの青魚やエビ、カニ、イカ、貝類、またピーナッツやソバがじんましんを起こすアレルギーの原因として知られています。乳児期の原因としては、圧倒的に鶏卵が多く、次いで牛乳、大豆が原因となることが多いのですが、最近では小麦でアレルギーを起こす子どもが増加しています。
花粉やハウスダストを吸い込むことでアレルギー反応を起こし、じんましんがあらわれることがあります。ハウスダストには、ほこりやカビ、フケ、じゅうたんや畳に潜むダニ、動物の毛などさまざまなものがあります。
衣類のゴムやベルトで圧迫された部分にじんましんが出ることがあります。時計のバンドや、かばんを下げていた腕の一部などにも起こります。この衣類の刺激などによるじんましんは赤く腫れるだけで、痛みやかゆみをともなわないこともあります。
お風呂などの熱いもの、冷たい水や冷たい風などの刺激がじんましんの原因になることがあります。まれに日光の当たった部分にじんましんが起こることがあります。また、運動したときなどに体が内から温かくなりますが、この体温の変化によってじんましんを起こすこともあります。
激しい運動などによる身体的ストレス、人間関係や仕事などの精神的ストレスによってもじんましんを引き起こすことがあります。これらはほとんど30~60分ほどでおさまるような一時的なものがほとんどです。
じんましんは、アレルギーが主な原因になります。アトピー性皮膚炎や花粉症、喘息などのアレルギー性疾患を持っている人は、持っていない人よりもじんましんを起こしやすいといわれています。
抗生物質や風邪薬、解熱鎮痛剤、咳止めなどの身近な薬でもじんましんを起こすことがあります。特定の薬の服用でじんましんを起こすようなときは、主治医に相談しましょう。
じんましんの原因物質を食べたり、吸ったり、触れたりした後に、表面が平らで赤い膨らみが突然あらわれます。大きさは直径数ミリのものから、広範囲に地図状に広がるものまであります。この膨らみは数時間で綺麗に消えてかゆみがなくなることもありますが、出たり消えたりして数日間続くことがあります。
皮膚にじんましんがあらわれるのにともなって胸やのどが苦しくなり、ゼーゼーと音を立てたり咳が出たりすることがあります。このようなときは気道の粘膜にもアレルギー症状が出て、粘膜が炎症を起こし、狭くなっています。症状が激しくなると呼吸困難に陥ったり、さらにはショック症状(アナフィラキシーショック)を起こす可能性もありますので、緊急の対応が必要です。
アトピー性皮膚炎は強いかゆみをともなう湿疹が、顔や首、ひじや膝の内側などにでき、同じ部位に繰り返し起こります。そのため皮膚に色素沈着を起こし、表面が黒ずんできます。乳幼児期では赤いジクジクした湿疹、幼児・学童期では、皮膚全体がカサカサになります。じんましんでは皮膚が赤く盛り上がる、かゆみをともなう膨疹があらわれます。じんましんが消えた後は、通常、完全に正常化するので、色素沈着などは残しません。
原因となる物質を特定し、避けることでじんましんを予防できます。しかし、じんましんは食品や薬剤、吸入物など原因となる物質が非常に多く、簡単に原因を特定できるような検査方法がまだないため、原因を特定できないことも少なくありません。
擦り傷は皮膚の一番外側にある表皮がこすり取られ、はがれた状態になる浅い傷です。皮膚の浅いところには神経がたくさんあるため、多くの場合、切り傷よりもひりひりとした痛みが続きます。切り傷は刃物などで表皮が切り裂かれた傷で、皮下細胞に達する深い傷になることもあります。擦り傷、切り傷とも適切な手当をしなければ、細菌などに感染して化膿することがあります。
擦り傷は、皮膚の表面を擦ったことにより、炎症が起こっている状態です。深い切り傷は、炎症を起こしたところに砂や泥などの異物が入り、それを放置しておくとそこから細菌に感染し、化膿する恐れがあります。
土の中の破傷風菌に感染して発病する疾患で、死亡することもあります。傷から感染すると1~2週間ほどで、首筋がはる、口がこわばって食べ物が飲み込みづらくなる、舌がもつれる、顔や体全体の筋肉が痛む、痙攣、呼吸困難などの症状があらわれます。錆びた刃物の切り傷や、細菌に汚染されたどぶ川のようなところでけがをしたときなどは要注意です。
ごく小さな傷からブドウ球菌や連鎖球菌などの細菌が侵入し、皮膚の深い部分(真皮から皮下組織)に炎症を起こす疾患です。幼児や高齢者に多く、広い範囲の皮膚が熱をもって赤く腫れ上がり、触れると強い痛みがあります。進行すると化膿したり、高熱や悪寒が出ることもあります。
細菌感染を防ぐために、まず傷口についた砂や泥などの異物を水でていねいに洗い流すことが大切です。異物が取れたら、傷口を乾燥させないようにラップなどで傷を覆う湿潤療法を行いましょう。このとき傷口に消毒液を使わないのが原則です。消毒液を使うと、治癒を遅らせることになります。
出血が少ないときには、傷にふれないように注意しながら傷口を水で洗い流し、擦り傷同様、傷口を乾燥させないように湿潤療法を行います。出血量が少し多いときは傷口を心臓より高い位置に上げ、清潔なハンカチ、タオルなどを傷口に当てて手で圧迫して止血します。止血後は傷口を水でよく洗い、湿潤療法を行いましょう。
破傷風は、あらかじめ予防接種を受けておけば細菌が入っても感染を防ぐことができます。野外活動の多い人は、10年に1回を目安として、ワクチンの接種をおすすめします。小学生以下は、無料で定期接種を受けていますので、破傷風に感染する心配はありません。
傷が大きく深いときや、傷のところに異物が残っている恐れがあるようなときは、主治医に相談するか外科を受診しましょう。また、痛みが続くときは、ばんそうこうなど傷口を覆っているものをはがして傷を観察しましょう。傷の周囲が赤く腫れて、熱をもったり膿が出ていたら、早めに外科を受診することをおすすめします。
はしか(麻疹)、風疹(三日ばしか)は、それぞれのウイルスによって、皮膚を中心に症状が起こる感染症です。はしかは冬の終わりから春にかけて、風疹は冬から初夏にかけて患者数が増加します。どちらも乳児期後半から学童期の子どもに多い疾患でしたが、乳幼児期に予防接種を受けていない子どもが増えたために、近年は感染者の増加が問題となっています。
はしかウイルス、風疹ウイルスに感染している人のせきやくしゃみ、鼻水などによって感染者からウイルスが飛び散り、直接飛沫を吸い込んだり、手や肌に触れることで感染します。はしかは感染力が強いので、空気中に浮遊しているウイルスを吸い込み空気感染することもあります。はしかは感染するとほぼ100%発病しますが、風疹はウイルスに感染しても、20~40%の人はまったく症状がでないままで終わることがあります。
初期には鼻水やくしゃみ、38℃前後の熱など、風邪に似た症状があらわれます。目やにや目の充血をともなうこともあります。次いで口の中の粘膜に、小さい白い斑点が出ます。その後3~4日ほどで熱が下がりますが、約半日後に再び熱があがり、同時に赤く少し盛り上がった発疹が体中にあらわれます。症状は10日~2週間程度でおさまりますが、まれに肺炎や中耳炎などを合併することがあります。また、大人になってからかかると重症化しやすいといわれていますので、注意が必要です。
まず耳のうしろや首などのリンパ節が腫れ、その後米粒からエンドウ豆ほどの大きさの淡いピンク色をした発疹が顔や耳の後ろにあらわれ、発熱をともなうこともあります。この発疹は1~2日で全身に広がり、3日程度で自然に消えていきますが、発疹が消えるころにかゆみが出ます。また、妊娠3カ月以内の妊婦が感染すると、胎児に重大な影響が出ることがありますので、なるべく子どものうちにワクチンを接種することが非常に重要となります。
はしかの予防接種は決められた期間であれば、国の負担で受けることができます。また、予防接種前にはしかに感染している人に接触してしまったときは、すぐに医師に相談しましょう。はしかは感染してから症状が出るまでに10~12日程度かかり、その間に適切な治療を受けることで軽症で済む場合があります。
はしかと同様に、決められた期間であれば国の負担で予防接種を受けることができます。妊娠3カ月以内で風疹にかかると、胎児に影響が出ることがありますので、これから赤ちゃんを産む予定の女性でワクチンの接種を受けていない人は、必ず予防接種を受けましょう。自分がすでに風疹にかかったことがあるかどうかは、血液検査で調べることができます。
とくにはしかでは発熱によって大量の汗が出るので、こまめに水分を補給しましょう。果汁ジュースや麦茶、紅茶などは、汗で失ったビタミンや塩分も補うことができます。また、赤ちゃんは発熱があると機嫌が悪くなって飲まなくなり、脱水症状を起こすこともあります。こまめに飲ませて、十分な補給を心がけましょう。
室温は20~25℃くらいにして、ときどき換気をするようにしましょう。加湿器や濡れタオルで室内の空気を保湿することも大切です。はしかや三日ばしかのときは、体が熱いのに手足が冷えてしまうことが多いので、薄手で長袖の寝巻きを着て、靴下や手袋などで手足の先が冷えないようにしましょう。
子どものころに感染した水ぼうそうのウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス)は、その後も神経節にひっそりと住みついています。このウイルスが体の抵抗力が低下したときに再び活性化することがあり、痛みをともなう赤い斑点や水ぶくれなどの発疹が神経の分布に沿って帯状にできる疾患です。日本人の10~20%に発症するといわれています。
過労やストレス、加齢などによって抵抗力が低下すると、神経節内のウイルスが再活性化し、帯状疱疹を発症することがあります。そのため、仕事などが忙しい年末の時期や、連休など遊び疲れた時期に発症する人が多くなります。通常、発症は一生に1回ですが、最近2回3回と再発する人が増えているのは現代のストレス社会による免疫力の低下が原因と考えられています。
発症のピークは20歳代と50歳代です。20歳代に多い理由は、子どものころにかかった水ぼうそうやワクチンの接種による免疫の効果が徐々に弱まる時期にあたることと、日常的なストレスが重なることが原因と考えられてます。また、50歳代に発症が多い理由は、免疫力が弱まる年代であると同時に、水ぼうそうにかかっている子どもに接する機会が多いためと考えられています。
アトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が低下していると、帯状疱疹にかかりやすくなり、さらに症状も重くなる傾向があります。また、糖尿病や白血病、ステロイド剤の服用、その他手術や放射線照射、人工透析などによって免疫力が低下しているときにも、帯状疱疹を発症しやすくなります。
顔、胸、背中やお腹などの一部に発症することが多く、最初に刺すような痛みやかゆみがあらわれ、赤いブツブツとした発疹が出ます。やがて発疹は神経の分布の方向に沿って、体の左右どちらかに帯状に広がっていくのが特徴です。発疹の上に小さな水ぶくれがたくさんあらわれ、炎症によって膿を持ち、かさぶたに変化して通常は3週間ほどで治ります。
帯状疱疹の痛みは通常、発疹がひくとともに治まりますが、発疹が治っても3カ月から3年間くらい痛みが続くことがあります。これが帯状疱疹後神経痛で、神経が炎症によって傷ついたことで起こると考えられています。帯状疱疹になった人の約3%に発生し、60歳以上のお年寄りや帯状疱疹の初期症状が重かった人に多くみられます。
物音や人の話し声が聞こえにくくなった状態が難聴です。ほお、下あご、耳から首や肩にかけて帯状疱疹が発症し、内耳の神経が侵されると耳に異常が起こります。はじめに耳痛や頭痛があらわれ、次第に難聴やグルグル回転しているようなめまいが起こります。皮膚の症状が治まったあともめまいなどの症状が残ることがあります。
顔の神経は脳から内耳の神経と一緒に耳の奥を通って耳の穴の近くから分かれて顔に分布しています。そのため、帯状疱疹が頬やあご、首など耳の近くに発症すると、顔の神経にも障害をもたらし、顔がこわばって目を開けたり閉じたりできないほどの麻痺が起こります。難聴やめまい、味覚障害をともなうこともあります。
目の周囲や額に帯状疱疹が発症し、顔の神経が侵されると、目の角膜や網膜に炎症を起こすことがあります。目の痛み、まぶしさ、涙が出るなどの症状があらわれ、進行すると視力が低下します。炎症の影響は視神経にまで及ぶことがあるため、最悪の場合失明することもあります。
お腹に発症した場合は、片側の腹筋が麻痺して、大腸などの働きが低下し膨満感を感じたり、便秘になることがあります。また、陰部周辺に発症した場合は、膀胱や尿道の働きが低下して尿の出が悪くなることがあります。さらに、炎症が強く帯状疱疹が脊髄の深い部分にまで及ぶと、運動麻痺や筋肉の萎縮を起こすこともあります。
水ぼうそう(水痘)は、水痘・帯状疱疹ウイルスの感染によって発熱と全身の皮膚にかゆみのある水ぶくれ(水疱)があらわれる疾患で、冬から春にかけて多くみられます。赤ちゃんや幼児に多くみられ、年齢が高くなってからかかると症状が重くなることがあります。ただし、一度かかると生涯にわたって続く免疫が得られ、水ぼうそうの再発の心配がなくなります。
水ぼうそうは、ヘルペスウイルスの一種である水痘・帯状疱疹ウイルスに初めて感染することで水ぶくれがあらわれます。水ぶくれに直接触れたり、感染した人のせきやくしゃみなどの飛沫を吸い込むことで感染が広がります。また、強い感染力をもったウイルスのため、一人が発症すると集団生活をする園児や学童、家族間で流行します。
発熱と同時に、胸や腹部を中心に頭皮や目、口の中の粘膜にいたるまで、全身にかゆみのある赤い発疹が広がります。発疹は2~3mmの赤く小さなブツブツから始まり、水ぶくれ、中心に膿をもった膿疱、かさぶたへと徐々に変化します。これらの発疹が混在してみられるのが特徴で、全てかさぶたになるには1週間ほど要します。1~4歳の頃がかかりやすく、ほとんどの子どもが9歳ごろまでにかかります。感染力は、水ぶくれの状態のとき強く、かさぶたになると感染力はなくなります。
大人の水ぼうそうは、体のだるさやニキビなど、とても水ぼうそうにかかったとは思えない初期症状があらわれます。その後、発熱と水ぶくれの症状があらわれます。子どもの感染に比べて熱が高く、水ぶくれはかゆみより痛みが強いのが特徴です。また、肺炎や肝炎などを合併して重症化するケースが多いので注意が必要です。妊娠中の女性が発症した場合は、お腹の胎児にも感染し、失明の原因になることもあります。
水痘・帯状疱疹ワクチンを接種することで、感染の予防だけでなく、感染しても症状を軽減することができます。またワクチン接種によって体内に抗体をつくると、ほぼ一生にわたり免疫が持続します。ワクチンは生後12カ月以上から受けることができます。
水ぼうそうは水ぶくれに直接触れることや、感染した人のせきやくしゃみなどの飛沫から感染します。主な感染原因が接触と飛沫によるものなので、同一フロアや同じ部屋で過ごすなど、感染した人との接触機会はできるだけ避けるようにしましょう。感染を広げないためにも、発症してから全身の水ぶくれがかさぶたになるまで、登園や登校を避ける必要があります。